「スポーツトレーナー」の仕事は多様だ。
アメリカなどでは「トレーナー」と言えば
ほぼ全員、仕事の内容は同じようなものだが、
日本の場合は、個人によって内容は様々である事が多い。
トレーニングまでも見る人もいれば、
いわゆる身体の調整(施術の類い)を中心に行う人もいる。
まあこの辺は、チームや個人から
何を求められるかによって決まって来るのであって、
要するに日本では、何にでも対応出来た方が仕事に在りつき易い、
という事だけは言える。
そこで表題の件。
自分の場合、トレーニングも見たりはするのだが、
主には「身体をどう使うべきか?」というポイントを指導する事が多い。
よって必然的に、技術やフォーム的な部分にも関わる事になる。


スキージャンプと言うのは、簡単に言ってしまうと
出来るだけ速く滑ってスピードをもらい、
力強くカンテを踏み切り、
理想的な方向に飛び出し(上過ぎず、下過ぎず)、
空中で効率よく風を受け、
美しく着地。

という事になる。
(そう簡単では無いのだが)


全ての要素をここで解説できないが、
いつも選手に言ってるのは
「ジャンプと投球は理屈は同じ」という事だ。
投球動作は、ジャンプとは当然下半身の使い方や順序は異なるが、
体幹によって肩が前方に送られ、
次に肘が出てターゲット(キャッチャーミット)に向かい、
次に手首〜指先が出て、ボールをリリースしていく。


もし、ボールがとてつもなく大きいものだったら、
一体どうなるだろうか。
例えば「地球」だったら?
もちろん投げられる訳も無いが、
非常に大きな力を加えられるとしたら、果たしてどうなるか?
そう。投げようとした「人間」の方が飛んでいってしまう。


突飛な発想と思わないでいただきたい。
「ジャンプ」や「走る」といった競技は、基本的には全て同じだ。
「地球」を投げる。「地球」を突く。
ただし半端な力では地球がびくともするはずも無く、
まして体も動きが止まるだけで、びくともしない。
投球動作は、ボールという軽量な物を扱うので、
下肢と体幹の移動や動きのスピードを上げる事で
十分ボールを動かすエネルギーを得られる。
「地球」に対して体を浮かすだけの力(つまり地球を投げるだけの力)は、
体の動きだけでは足りないので、助走を付けたり、
スキージャンプでは長い距離を滑って来るのである。


投球では下肢や体幹を通して大地から得た力を指先に伝えて行く時に、
途中の肩〜肘〜手首が余計な事をすると、動きを断ち切る事になる。
つまり「スピードをロス」「回転をロス」する事になってしまう。
スキージャンプで例えると、
実は長いアプローチ(滑って来る所)は「肩」であり「肘」だ。
そこを、極力余計な事をせずに「滑らせて」スピードをもらう。
つまり、身体自体は「指先」に相当すると考えられる。


そして自分の体の中にも「肩・肘・指先」が存在する。
それぞれ「股関節・膝・足先」だ。
つまりジャンプ台と自分の身体を併せて「二重螺旋」動作である。
自分の中のイメージングとして、
「円運動×2」の“意識”を持つ事が重要である、と私は考えている。


余計な事をせずに、流れを切らずに「地球」を投げれば良い、という事になる。

ま、理屈ではね。