今から書く事は、「大卒者」と「専門学校卒者」の違いについて、である。
最初に断っておくが、最終的には「個人的資質」に拠るのは言うまでも無い。
あくまでも“全体的な傾向として”である。
これまた最初に断っておくが、私も専門学校卒であり、
大学には行っていない、という事を付け加えておく。


この記事を書こうと思ったのは、私が現在、専門学校で教鞭をとって、
20歳前後の若者を見て来た事と、
以前に企業に所属し、人事関連を担当していた時に、
やはり20歳から22歳前後の若者を採用面接してきた(毎年1,000人前後)経験から、
社会に出て行こうとする若人に、実態を把握して欲しい、との思いからである。
特に教鞭をとる専門学校で、就職活動を見ていると、
「就職決まらない!」「厳しい!」との声が多く、
もう少し、自分の現状認識をすべきでは?と日頃から思っているので…。


誤解を恐れずに言えば、2年の年齢の違いは誤差と捉えるとして、
傾向としては、「専門学校卒者」より「大卒者」の方が総じて能力は高い。

あくまでも20歳前後の時点での比較、という意味。
その後色々な経験を積み、素晴らしい人材に育つ人も、もちろん沢山存在する。
20歳〜25歳の経験や意識の持ち方で、一気に人が変わるのも事実。
誤解無きよう。



繰り返しにはなるが、無論この時点で逆転している個人も存在する。
あくまで「総じて」である。
では、それが「学力」の違いかと言うと、私はそうとは思わない。


私が感じる最大の相違点。
それは「我慢」の経験の差、であると考える。


最近は少子化の影響などもあり、以前に比べると大学には入りやすくなった、と聞く。
しかしそうは言っても、大学のレベルの差はあれ(推薦入学もあるが)、
少なからず「受験勉強」をしなければならない。
(「受験勉強」ではなくとも、一時期は勉学に集中しなければならぬ)
その間は、多少なりとも何かは「我慢」をしなければならない。
(友人との交遊、趣味、遊戯、その他…)
だが、専門学校の多くは、ほぼ“無試験”に限りなく近い。
学校によっては、かなり学力が低くても入学できる。
つまり、大雑把に言うと「我慢」の経験が“少ない”か、ほとんど“無い”に近い。
その“差”が、結局は立ち振る舞いや物事に取り組む姿勢、などに表れているように思えるのだ。


企業によっても採用の基準は異なるが、
特にサービス職種などは必ずしも筆記試験重視とは限らない。
あくまでも「人物重視」である企業も少なくない。
もしこのような時に、仮にまったく学歴情報を見なかったとして面接を行った場合、
結果として採用者・不採用者の学歴を後で確認しても、
結果として、やはり「大卒者」が中心になってしまうのが実状だ。


では何故「学力の差」では無いと私が考えるかと言うと、
冒頭にも言った通り、専門が高卒者にも当然優れた人材がいる。
ただ、自分の経験上、その人物達も、
少なからずどこかで「我慢」の経験がある事が多い。
家庭環境、運動部での活動状況、意識を持ったアルバイト経験、などなど…。
そういうモノが、不思議と自然に言葉の端々や立ち振る舞いに表れるものなのだ。
最近、採用面接で流行の「ブレーンストーミング」や「ディスカッション」などにも如実に表れるのは、この「我慢」経験だと思われる。


ここで言う「家庭環境」「運動部」とは、
別に「家庭が経済的に苦しい」とか「運動部に在籍していた」という事だけでは無い。
その時の「意識」や「取り組む心の姿勢」の在り方による。
(まあ、そうなると幼少期のご両親の教育、という事になってしまうのだが…)



そう考えると、
これまた誤解を恐れずに言えば、
「我慢」の経験が少ない「専門学校卒者」はどのように勝負するかと言えば、
どこでその「我慢」経験を穴埋めするか、である。
実際には専門学校内の活動には限界がある。
運動部、とは言ってもうるさいOBがいる訳でもなく、
正直言ってあまり社会勉強にはならない。
(部活に意味が無い、という事ではありませんよ!)
やはり「意識を持ったアルバイト」と言う事になろう。
「ただやっていれば良い」というモノでもない。



今思い返すと、自分の場合も「意識を持ったアルバイト経験」が、
今日の人格形成に非常に影響を与えていると思う。
言わば、「正しい“プライド”の形成」である。
私の場合は運が良かったのかも知れないが、
経験したどこのアルバイトの職場でも、
上長の立場にある人がうまく“プライド”をくすぐってくれて、
適度に責任を与えてくれ(実際には“与えたように見せかけていた”と思う)、
「そこで結果を出して、認めさせてやろう」という意欲を
うまく引き出してくれたと思えるのだ。


その為には、ある部分で自分を抑えなければならない場面もあるし、
周りの状況を見つつ自分の意見を発しなければならない事もあるという教訓を、
失敗の中から得られた。
つまり、「ユーザー(お客様)、上長、経営者」の三方に、いかに自分を認めさせるか?という、
良い意味での基本的な「プライドづくり」に大いに役立った、と言う事だ。



このエントリーの主旨は、
自分も専門卒で、現在、専門学校で若い人を指導する中で、
是非同じような状況にある人たちに、少しでも意識を持ってもらえたら、
というものである。
ここでは自分の経験から「意識を持ったアルバイト」を薦めているようにも取れるが、
「我慢」を学べるならば、どの場でも良いと思う。
断定的に書いたようにも見えるが、専門学校の運動部や学内活動でも、
同様の経験が得られる場もあるだろう。


一般で言われている「人物重視」という便利な言葉に躍らされる事無く、
その為に、自分は何をすべきか?を是非考えて欲しい。
説教じみてしまったが、最近、心の底からそう思う。